ある年の冬、一緒に暮らしていた犬が身体を抜け出して風になりました。広島市では17歳で長寿犬認定され、あと数日で表彰式というところ、帰らぬ旅へ。このサイトへは、犬ブログを見に来てくださる方も一定数いらっしゃるため、今日はあらためてお別れのレターを書いてみようと思います。とはいえ、何年も下書きのまま書き上げられなかった記事です。
骨太のおっとりミニチュアダックスフンドについて
お別れしたのはわが家の長男犬、ミニチュアダックスフンド。毛色はゴールド。しっかりした骨格で他のダックスより脚が短かく、ロングヘアーでもなくスムース(ショートヘアー)でもない愛嬌たっぷりの犬でした。
お別れしてからはふとした瞬間に思い出す長男犬の記憶に涙する日々で、なかなか過去の記憶に出来なかったことを覚えています。
そこで、お別れの手紙を書いてみようと思いたってブログを書き始めたものの、また涙で文字が滲んで書けず。今やっと落ち着いて振り返ってみようと思います。
夫の連れ仔だった犬へ
まるでロウソクの火が消えるように、あなたがこの世を立ち去ってから、早いものでもう3年。雲の上でもいつものように笑顔ですごしていますか。そちらはいつでもごはんがあって快適でしょうか。
人は好きだけど他犬が苦手な犬だったので、そちらで気の合うお友だちを作ってのんびり過ごしていてほしいものです。
あなたは私たちが結婚する前にすでに夫と共に居て、私があなたたちのコミュニティに入れてもらったはじめの数カ月。私にとってははじめて室内犬と一緒に暮らす経験でした。
「いつ帰るの?」「ご主人がいないのに、なぜいるの?」「(不満!!)」
その大きな目で訴えてきて、だけど何を訴えているのかが人である私には分からず、日に何度散歩に行ったことか。気づいたら仲良くなっていたけれど、実はノイローゼになるかと思うくらいで、犬の学校を検索したりしました。
あなたが居たころ、夫はよく会社の同僚を自宅に招いていました。そうすると、必ず全員に挨拶をして回るコミュニケーション能力の高い犬でしたが、驚くことに、挨拶はちゃんと上司から順に回っていたことを覚えています。(初対面なのに!)
まるくて穏やかで、マイペースさをもったあなたは、こと対人関係においては特別なスキルを持っていました。
家で走ることはほぼなかったこともあり、当時は廊下には滑り止め防止カーペットは敷いておらず、廊下のフローリングを歩くときはいつもチャカチャカと軽快な音を鳴らして玄関までお迎えに来てくれました。
人が大好きで、初対面のエアコンのクリーニング業者さんや配送の方に対しても、会って3秒でお腹を見せて撫でて撫でてと催促する節操ないところも愛すべき点でした。
この世から居なくなったあとはどこに行くのだろうと考えてみました。天国、虹の橋、極楽浄土、お空。色々言われていますが、私にとって、しっくりきたのが『風になる』という言葉でした。
この世とあの世に別れるけれども、風という自然の一部に溶け込んで私たちを見守ってくれているイメージです。人もそうですが、もともと動物は自然の一部。この世を去ってからは、風や光、木々の一部になり命が循環する感覚です。
痛かったり苦しいことはなくなり、心身ともに元気に過ごしているのです。ふかふかのベッドや晴れの日の公園、ベランダから眺める雨粒。時にはテンションの上がる雪の中へダイブしたり。
だから、あなたが風になって居る前提で手紙を書きます。
もうどこも苦しくなく、頭もはっきりして目もクリアに見えて鼻も耳も万全で何往復もダッシュできて。どんなに遊んでも疲れない筋肉質な身体でおもちゃの引っ張り合いっこしたり。発酵中のロールパンを9個も食べてお腹で発酵させ、そのあと1個づつ吐き出すくらいの食い意地で。風通しよく心地のよい場所に帰ってヒマだと思ったら。
どうか時々は私たちが一緒に暮らした家に、帰ってきてくれませんか。
あなたが居なくなってから、実は新しく犬を迎えました。ジャックラッセルテリアの女の子です。弟分だったダックスは兄になりました。それから私は思いがけず足腰を悪くして天職だと思っていた片づけの現場サポートをやめることになりました。そのあと持ち直して今はすべての仕事をオンラインに切り替えました。やんちゃな若犬のトレーニングも毎日コツコツしています。
身体の不調に伴って訪れた環境の変化は仕方のないことで、乗り越えていくしかないものです。だけどふとした瞬間に脆さを感じることもあります。私は家族が心配です。どうか、私の大切な家族を守ってください。
何度か引っ越しをしているので、こんがらがらないように家への帰り方のおさらいを。よく散歩していた緑豊かな公園の並木道をまっすぐに走ってくると開けた広場に出ます。信号待ちをしましょう。蚊に刺されないように気をつけて。
横断歩道を渡るとマンションが見えます。玄関から入ると誰かが「可愛いね」と声をかけてくれるはずです。あなたの笑顔で仲良くなって一緒にエレベーターに乗せてもらってください。ドアを開けると廊下にお水のお皿があります。まずはお水をのんでください。
お水を飲んだらリビングへ。リビングの隅にある父さんのPCデスクの上に、あなたを偲ぶためのエリアが幅を効かせています。あなたの飼い主である父さんは、時々おりんを鳴らしてあなたに話しかけています。そこでしっぽを振って風をおくってみてくれませんか。あなたがゆらゆら揺らすしっぽの感触を父さんに感じさせてあげてください。
書斎では、あなたの母である私がMacに向かっています。しっかり働くんだよと、ふくらはぎの辺りに濡れた鼻をくっつけて檄を飛ばしてくれませんか。
仕事が一段落したら母さんと若犬の日課であるトレーニングがはじまります。若犬は調子に乗るタイプで驚異的なジャンプ力でアタックしてきたり、おやつを握る手にかぶりついたりします。私の行動が遅いと後ろからどかーんと突き飛ばしたりします。
それをあなたのMAX8kgだった体重をかけた突進で止めてほしいのです。若犬は小柄なので簡単に弾き飛ばされるでしょう。でもすぐに向かって来ると思います。なんなら弾き飛ばされた瞬間に方向転換して床を蹴り、あなたのもふもふにかじりつくでしょう。威厳を見せて叱ってください。
そして無事に私があなたに気づいたら父さんを呼びに行きます。今までそうしていたように父さんとカーペットに寝転んで、ないしょ話に付き合ってください。眠くなったら寄り添って、抱きしめ合って眠ってください。それだけでいいんです。どうかよろしくね。
人は、一般的にはあなたたち犬より少し長く生きます。犬の一生は人からすると短く感じるけれど、人もいつまでも元気な身体ではいられないから。私はあなたの最期を見送ることが出来てホッとしました。同時にもっと一緒に居たかった。だけど身体と心が思うように動かないまま長生きするのは苦しみが続くことなんじゃないかと葛藤もする。
その沢山の悩みごとや、葛藤、愛のど真ん中を陣取って、常に私たちの一等席で暮らした犬があなたでした。
最後にひとつ。
弟分だったダックスは若犬の相手を、時には怒ったりスルーしたり優先してくれながら、とてもがんばってくれています。彼もあなたに会えたら喜ぶことでしょう。
笑顔がよく似合う足の短いあなたへ。
どこにも縛られず、世界中を自由に吹きわたる風のように暮らしてください。